チリ散りになったんだけどカメラ目線で/末下りょう
 
なら一度くらい許してもらえるなと思った。そう思ってしまった。(知らないのに知っていると思い込んでいること)エンゾさんは愛する妻の気性を知ってるようでほんとうは知らなかった。(法廷で会うまで女の本性はわからない)と言った人がいるが、エンゾさんは裁判所には行ったこともないのでそれもしょうがない。
翌る日、夫が仕事に出掛けると、妻はすべての食器と家具を弟たちのトラックに積み上げて出ていった。テキトウな道端に食器と家具を一旦降ろすと妻はまた戻り、弟たちに家のすべてのドアと窓ガラスを外させ、さらにトタン屋根も片っ端から剥がさせて去っていった。エンゾさんがその日、真っ直ぐ家に帰ると、水色の壁だけがエンゾさん
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