徒歩/dopp
 
鳴き真似をするのは決まったと考えてよかった。あとはうぅあおおぅあとうめき叫びながら泣きながら剣を振り回せば舞台俳優の頂点に立ったも同然なのだ。横道の坂の住宅街を見上げながら満面の笑みで微笑みながら高速で歩いていた。部活帰りの女子中学生の横を通り過ぎた時に、ひっと軽く悲鳴を上げられたくらいだから相当な速度であったに決まっている。もう三時間は歩き続けていたが、どんどん速度は上がり口元に笑みが浮かんだ。最高に一人だった。誰も僕の行く手を遮ることはできない、このままどこにも辿り着かなければ、どこにも行かなくていいのだから、これ以上の事はないと言ってよかった。ショルダーバックの下の肩紐が蒸れ、Tシャツを汗で
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