流転/MOJO
 
あれがターニングポイントだったのかもしれない。あの、鯉を大釣りして、川に落ち、尻穴の近くを怪我した時。あの時点で、素直に添乗員になる事を諦めていたら、自分の人生は違った展開になっていたかもしれない。添乗員の仕事は自分には合っていなかった。無理をして幇間の真似事などしたことが、後の鬱病と繋がっているのではなかろうか。
 あるいは、私の育った環境に問題があったかもしれない。父親は建材メーカーのサラリーマンだったが、子供の教育には関心がなく、仕事一本槍の男であった。母親は不動産投機をしていた。いつも失敗ばかりで、頻繁に借金を督促する電話がかかってきたり、人相の悪い男が訪ねてきたりした。投機が上手くゆか
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