消失の夏術/ただのみきや
輝き 寄せる波と飛沫
限りなく 停止しかけたもの
本当に解らなくなった
《右だ もっと左 行き過ぎだ
右はこちらから見て右なのか
左は向こうから見て左なのか
本当に解らなくなって
渾身の力で振り下した
なにも無い 熱い砂が
幼い意思も願いも力も吸い取って
尚も焼けていた
完全に停止した
海 う み う う う み
熟れ 落ちる 木から 実が
踏まれ 甲虫が 潰される 車に
死という 痕跡 いのちの 残して
失踪する メモリーから あなたは
空白に 描かれた窓 誰一人として
壁が
[次のページ]
戻る 編 削 Point(16)