ギフト/吉岡ペペロ
たのだろうか。びっくりして腰を抜かして、膝を震わせて、思うように動かなくなった指で、警察に電話したのだろうか。久美ちゃんはこころに傷を負う。山田さんは経歴みたいなものに傷をつける。警察に向かっているのだからそれはもう確定的だ。
どこで降りたら警察だったっけ。大きな駅で降りたらいいか。大きな駅なら交番くらいある。大悟は雨粒の車窓の向こうを見つめていた。バスは造成地を抜けて街並みのなかを走っていた。
マスターを殺したあとまっさきに思ったのは、自分の親兄弟のことだった。情けなかった。こんなことになってしまったことが惨めだった。理不尽な理由でひとり洞窟に閉じ込めらてしまったようだった。母のことが気の毒
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