ギフト/吉岡ペペロ
 
た。
「どこに?」久美ちゃんがジーパンを履きながら尋ねた。
「警察に」大悟がぼそっと言い捨てた。
「なんで?あたし嬉しかったんよ」大悟はそれにはなにも返さず店を出た。

バスのなかは魚をスモークしたような臭いがした。バスの内装の臭いなのか燃料の燃える臭いなのかその両方の臭いなのか、大悟はお尻に湿っぽくひっつく座席をむずむずさせながらその臭いを嗅いでいた。それは気持ちを落ち着かせるための呼吸のようになっていった。
ひらめきが大悟を襲った。分かった。魚の臭いは自分の手についたマスターの血だ。服には奇跡的につかなかったのに。洗ってもとれないのだ。
久美ちゃんはもうマスターの死体を見つけたの
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