無の絵画展/乾 加津也
 
り谷折りした血色の良い人形だが、どれもが同じ人物だとわかる

ラムール(が空中に浮かぶ)

小さな言語(ノイズ)を素早く吸引して屋外の空気清浄機で循環する展示空間では、あちらこちらで入場者らが立ちどまり、感慨深げに大きな壁を見上げている

例えばあの美大生風の若者二人は、ラムール、ひたすら空想を散りばめている様子だし、何人をも従えたあの老眼鏡の紳士は自ら醸し出す高名な画家の雰囲気で悦に入っている

(なら、この者たちは仕掛け人ということか、なんのために)

これ以上状況を判断する材料もないのならどっしりと、理解不能を楽しむほどの達観を装い、足元の、さらに床下を這う心拍に沿って歩
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