無の絵画展/乾 加津也
て歩こう、そもそも何かしらを感じ入ることが目的である、自分の五感を信じてみるのだ
ラムール
そのまま歩いた行く末は出口、建造物はおしなべて創作芸術の入口なのだが
ラムール
いやまて実は、視るべきは私自身か、ふと意思を持つだれかに視られている逆転の発想に気づいて足が止まる、見上げるがやはり無機質で堂々たる壁面が私との一定の距離を保つのみである
この後の出来事で特異なことは何もない、好きなら君が勝手に想像したまえ
ところで君は今度いつ絵画展を訪れるだろうか、その折はぜひあの壁を傷つけずに鑑(み)てもらいたい
偏執狂でも脹よかな、私の胸騒ぎ(ラムール)を識ってほしいのだ
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