三つの部屋/竹森
 
に発せられる圧力が、同一であるということだから。

夕方、彼は帰宅と同時に、灯りを点ける前に、ベットに倒れ込む。歯も磨かずに、コートも脱がずに。吐息が室内に満ちてゆき、彼は、家具や部屋の所有者という立ち位置から、その一部へと、変調していく。浅い眠りのあいだに見る夢は、たいていが悪夢だ。午後八時に目覚め、カーテンを透過し、自らもそれに溶かされつつあった闇の存在に気づき(闇に気づくという事が、自身に気づくという事とほぼ同義であるという事からも、あと一歩であった)、ボロアパートの三階という深海から自らを引き上げてくれる何者も存在しないという圧倒的な事実を突き付けられ、失われていく若さ、時間におびえ、
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