その夜の仕事/もり
 
揺れる車中で、一瞬だけ眠ったような気がした。酒も女もしばらくこらえて、不眠症気味だ。今日の仕事を終えたら、解禁といきたいところだが・・。
定員のセダンの不自由さから逃げたい気持ちもあった。大の男が、真空パウチされたソーセージのようにくたびれている。

俺たちの本業はバーやカジノ、クラブの元締。麻薬取引もあるが、めったに現場へは顔を出さない。チンケなことでムショ入りは避けたい。
だから今日、この殺しのミッションはあまりつれない。人一人を殺すときは、いつも胸騒ぎがする。その対象が裏切り者であったり、単純なヘマを繰り返した馬鹿野郎であっても。

「撃つ時は、鶏だと思え」
そんな先代からの激
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