その夜の仕事/もり
 
の激励も、俺にはシラけて聞こえた。椰子の実ならまだしも。俺は昔から赤い色が嫌いだった。
隣に座るデブ兄弟、セルフィとチャービーがまた痴話喧嘩をおっ始める。兄弟ならお互い分かり合えないもんか、とも思うが、あいにく英仏の「種」違いの2人に、絆なんて言葉は無縁のようだ。
手元にある自動小銃を天井にぶっ放して黙らせてやりたい。この街ごと。俺は頭が痛いんだ。
運転席のマジョラムはいつものように、口に爪楊枝を咥えてハンドルを握る。手下にはやけに厳しいこいつがママの前では、未だに「坊や」だということを、俺は知ってる。口唇期野郎。ママに買ってもらったであろう腕時計が、もうじき10時半を指すのが見える。

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