イノセントのありかた/ホロウ・シカエルボク
 
た目のような丸い下水溝の蓋の上で
一匹の汚れた黒猫がオブジェのように座っておれと向かい合っていた
その猫は怯えず
昂ぶらず
拒まなかったが
許しもしないように見えた
そんな態度で、そこにずっと座っていた
ここにわたしの暮らしがあった、そんなことを
そこにそうしていることで語ろうとしているように見えた―生暖かい瓦礫のようだった


おれは足を踏み入れた、足もとで崩れ落ちた屋根や壁の材料がガラガラと鈍く鳴った
そして猫の邪魔をしない程度の隣に腰を下ろして
猫と同じように生きた通りへ続く方を眺めてみた
猫はちらりとこちらを見て、「もの好きだな」というように首を軽く回し
それ
[次のページ]
戻る   Point(5)