イノセントのありかた/ホロウ・シカエルボク
 




名も無い瓦礫の路は
昔話をしたがっているように見えた
激しい雨のあとの
過呼吸のような陽射し
喉元を滑り落ちる汗を
呪いながら歩を進める
息すらかすれている
午後は容赦が無い


誰かに殺されたらしい野良犬の死骸が骨になって
小さなバケツのように肋骨を晒している
鮮やかな白のまま凍てついた身体の上を
数匹の蝿が学術調査のようにうろついている
おれの足音に彼らは動きを止め
窺うような間を取って飛び立っていく


その道の奥は行き止まりで
解体途中で放置されたのか、あるいは
放置されて崩壊したのかというような
小さな家屋跡があり
見開かれた目
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