トラベラー/マゼンタ
るだけ膨張したまひるの月
ハッとしてふりむく ゆるやかな視線の先に
どこかがずれる
死んでぼくたち骨になっても 草に染まっていくだろうから
そのままでもうじゅうぶん瀕死だ
そうか、するとどこへゆこうか
目をこらす とつぜん文字という文字が散っていく
わからなくなってしまう
圏外のサービスエリア、 煤けたツツジ
おーい、おーい、大きく手を振る子供たち
小さな窓から、ちいさくちいさく手をふる
極東の島国が、
見えなくなる
語りだせよ 古い物語を
風は半透明のぼくのからだを通りぬけていく
つよくぬけていく風 異国の山頂に立って それは
さんざん泣いて疲労した横顔のよう
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