ロスとロス (流し込むあいだの)/ホロウ・シカエルボク
 






もう一度ぐらついた壁を蹴り飛ばして貫けるかどうか確かめてみた、そいつはいまにも壊れそうな悲鳴をあげるくせに、絶対に壊れてしまうことだけはしなかった、それだけは譲ることはなかった、それで俺はシンパシーを感じて、それ以上そいつを蹴り飛ばすことはしなかった、俺がなにもしなくなったのを悟ると、そいつもなんだか親密な空気を出してき始めた、このところこんなものとばかり心が通じている、そして俺はそんな環境を結構気に入っている、なにしろ人間なんてものには交わる価値なんて爪の先ほどしかない、言ってみれば自分ではない人間が何をするのか、なんて、それ以上の興味なんかないのだ、壁や鉛筆やハサミとは
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