和解/吉岡ペペロ
ブランコを漕ぐ音が聞こえてきた。耳鳴りにちがいなかった。ぼくはカップの枇杷を見つめ、それからすぼめた口でわざとらしいため息を吐いた。
英語の授業が終わった。ぼくはテニスコートに直行した。
「うまいやん」と猫背の男に声をかけた。男はボールを持った手を猫みたいにしてちいさくぼくに振ってまたひとつサーブをした。ボールがネットの縁に当たってぼくの方に転がってきた。
「試合しよか」そう言うと男はからだをゆるめてニヤッと笑った。
ボールを打ち合うのは気恥ずかしかった。ぼくがたいしてうまくもないのをはやく伝えてしまいたかった。でも打ち合わなければ男に申し訳ないような気がした。
汗だくになった。毎日
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