和解/吉岡ペペロ
で見かけない男がサーブの練習をしていた。
猫背から繰り出されるサーブはひとりで打っているわりになんだか臨場感があった。運動神経がとつぜんテニスコートにあらわれたようだった。
みっつのレジにそれぞれ店員がいるのに列がなかなか進まなかった。
ぼくは昔のことを思い出していた。ちょうどこんな季節だった。よこを見ると枇杷が入ったちいさなカップがあった。ぼくはそれを手にとった。
まえの女の子が首を伸ばしてレジのほうをのぞいていた。いつも以上に列は遅々として進まない。新人のアルバイトでもいれたのだろうか。
貧血気味でもあったからぼくもいらいらしてきた。貴重な昼休みの時間が消えてゆく。どこからかブラ
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