和解/吉岡ペペロ
 

そとをみやると校庭みたいなテニスコートがしんとしていた。ソファに彼がいなかった。テラスのすぐよこには枇杷のオレンジがたわわに実っていた。
彼はテニスがうまかった。仲間にはぼくを含めてうまい奴はいなかった。だからだろうか彼はここではテニスの腕をあまり披露しなかった。彼は気遣いのできるいい奴だった。ぼくよりもずっと人望があった。
先生の髪の毛に天使の輪がかかっていた。先生とおなじ英語の長文を見ているだけでぼくは充足していた。先生も満ち足りた微笑みをテキストに落としていた。
とつぜん空気がポンと弾けた。ラケットがボールを打つ音だ。彼だろうかと思ってそとを見たら彼ではなかった。金網のむこうで見
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