僕のなかの思想が燃える/伊藤 大樹
 
違った東京の夕暮があった
海に向って沈む車を僕はたしかに記憶に刻みながら
ブラックコーヒーを呷ったんだ

カレンダーに映った君の横貌がなぜか
季節外れのスイレンのような狂った歯車を凍らせた
押し花にされた栞のような淡い感受性の海を
君はまだ知らなくてもよかったのだ

消印のない封筒が心のなかに投函された
流行歌を口遊みながら君と歩く街は
どこか卑猥で残滓のような青春を彫刻していた

雨雨雨雨雨雨雨雨雨雨雨雨雨雨

人生が一本のビデオテープなら
僕は何回でも巻き戻しただろう
人生が一枚の紙なら
僕は何回でも推敲しただろう

ガムみたいに石になった時間を吐き捨て
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