地下鉄のなかで/吉岡ペペロ
 
は製造会社も馬鹿みたいに儲かるものだから、企業は政府や州を抱き込んで製薬業界は無法地帯のようだった。ぼくにとっての外部が無法地帯をつくっていた。ぼくはその無法地帯で事務員のころよりかいい暮らしをしていた。
老人がぼくに重なってきた。ホログラムと間違えたのだろうか。点滅がわからないくらいもうろくしているのだろうか。
ぼくはとなりに映る誰かわからないホログラムに重なるようにして席を横にずれた。
「ごめんごめん」と老人がぼくを見て微笑んだ。
「いえ、かまわないですよ」ぼくは微笑みかえした。
虫のような匂いが相変わらずしている。
念のためひざのうえの鞄を押さえた。薬物のかたまりの感触があった。
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