地下鉄のなかで/吉岡ペペロ
 
きん善意についてよく考えるようになった。テクノロジーに仕事を追われて、人工知能に仕事を追われて、ぼくが反社会的な仕事に就くようになったことが原因しているように思う。
こうして地下鉄に乗っているとぼくには善意と悪意しか考えることがなかった。
席を譲るとかマナーを守るとか、善意とは外部に強制されるものであっていいのだろうか。
悪意にしてもそうだ。これまでのように事務の仕事に就けていればぼくは薬の売人になんかにならなくて済んだはずだ。これだってテクノロジーという外部にぼくが仕事を盗られてしまったせいだ。
ガン患者になりすまして薬を処方してもらう。州をかえれば薬はいくらでも手に入る。薬というのは製
[次のページ]
戻る   Point(4)