辻斬り批評モードー辻征夫の「むずかしくない詩の話」を読んでみた戦慄/石川和広
 
ら、引き出せるところは、自己のふかい癒すことの出来ないさびしさ、かなしみ


 こころぼそい ときは
 こころが とおく
 うすくたなびいていて
 びふうにも
 みだれて
 きえてしまいそうになっている


しかも、それは、生きることのはかなさが、ひとの「ひとは かるく/かぜかい?/とたずねる」という声により、たよりなく「かぜ」というやまいへと救い出され、名づけられ、世の中のことばへと変化していく。それは、カラダによって濾過されているようだ。
辻は、発語の瞬間が意味を持つまでのか細さを「かぜ」という、これまた、人の口から口へつたえられるものとしても、その、いのちの弱さのまま
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