傷を編む/ホロウ・シカエルボク
 
いる…二度目は過酷な仕事をしていたころのことで、原付で自宅近くの裏道を走りながら転寝をしてしまい、一時停止の小道で止まることなく飛び出し、横から跳ね飛ばされた、あのときのことはいま思い返してもよく判らない、疲れていたからきっと居眠りをしていたのだろうと思う―左脚の膝の上側がウェハースのようにグズグズになり、三ヶ月間膝をつくことが出来なかった、あんなことは二度とごめんだと思った…三度目は、通勤ラッシュでもたつく車の流れの端っこをお構いなしに走っていたところを、車の列を裂いて出てきた年寄りの運転する車に横から突っ込んだ…ああいう瞬間のことを思い出す、あそこからなにも思い出せない、そんなことになっていて
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