傷を編む/ホロウ・シカエルボク
 
だん、奇をてらいたいわけじゃない―そこには自分の知りたいことが確かにある、おれは自分でそのことを理解している、それだけのことだ…そんな写真を見ながらおれが考えるのは、たとえば巨大なトレーラーのタイヤに巻き込まれてゴムのように湾曲した肉体がもしもおれのものだったら、というようなことだ、どんな写真でも、そうだ…人生においてほんの数回、事故にあったことがある、一度は雨の日、三輪バイクで配達の仕事をしていて、路面電車の軌道に入り、スリップして線路脇の家屋に突っ込んだ―割れたガラス戸の破片は切れた右脚のふくらはぎに潜り込み、小さな破片や粉は結局取り切ることが出来ず、傷が塞がったいまもこの身体の中に潜んでいる
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