雨音の詩/栗山透
 
打ち損じた弾丸はまだ喉元にある。僕は咳払いをひとつしたあと、右足をほんの少しだけ前へ出して、声を出すために息を肺に吸い込んだ。「なぜ?」僕は言った。想定していたより小さな声だったがもう後戻りはできない。「なぜ?どうして僕が」女は黙ったままだ。紅いルージュの端が少しだけ動いたのが見えた。笑った、のかもしれない。

ルージュ。
雨。

窓の外はずっと雨が降っている。
雨音は"ザーザー"とか"ポツポツ"とか色んな擬音があるが、実際の雨音と比べるとどれもしっくりこない。あるいは集中して聴けば正しい擬音が見つかるのかもしれない。僕は耳を澄まして聴いてみた。
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