黒円(小説)/幽
+トピア(場所)ということで何処でもない場所を表すのであった。とすると・・・この空洞が何処にもない場所を意味するならば、この黒円は「無」の実体化であったとでも言えるのだろうか。だから男は消えねばならないのか。実体が「無」であったから、男の思惑や何か全てを鏡のように映し出していたと言うのか。いや、論理的に考えてそんなことはあり得なかった。先ず、「無」は何もないのであるから、実体化のしようがない。しかし、ならば今男が消えつつある事態をどう説明すればよいと言うのか。ああ、最早男の意識は薄れ、記憶も薄れていく。そう、男はこの世に大切な家族を置いてきてしまった。男はルーティンに誤魔化されて、この世の存在その
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