黒円(小説)/幽
で想う心象が映るようであった。何も映らない時は男は特に何も想っていない。それがわかれば黒円もなんということはなかった。
しかし、ある日を境に黒い輪っかの空洞に映る内容が変化してきた。映像が鮮明になってきたのである。とは言え、段々内容は常軌を逸脱してきた。とある日はこの世とは思われない眩い光と共にフルメタル・ボディの真っ黒な、体が非常に薄く先の尖った巨人の群の行進が映像となって映し出された。かと思うと、またある日はアッシリア像のような巨大なスフィンクスが何体も出現し、これまた巨大な門を番兵のように守っているのであった。特に驚かされたのはその色彩であった。これはこの地上の色彩ではない。何色と
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