黒円(小説)/
 
い実家の庭と日本家屋の数々が遠景で映し出されていた。そして・・・次の瞬間には消えた。
 
 それから、男はその黒い輪っかが持つ機能にも気がつかされた。例えば、同僚がハワイのリゾートの話をしている時など・・・たまにはそういうリゾート地でゆったりしたいなどと考えると・・・輪っかが出現し、その空洞に薄ぼんやりと海の風景が浮かぶ。そしていつも映像を映す際のサインは・・・輪っかは僅かに微動し、全体がより光沢を放つのであった。自分の思考が読み取られているのかもしれない・・・と思った男は、出現率が上がっていく一方の輪っかが多少不気味に感じられてきていた。それはある日、満員電車に乗っている時にも男のすぐ目の前
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