巨大な羽ばたきのビート/ホロウ・シカエルボク
そいつの強力な筋肉によって衝突事故のように振動していた。おれは窓の外を見たが、誰も慌てては居ないようだった。振動してはいるが、地震ではないのだ。そのことがはっきりと理解出来た。この鳥の羽ばたきのせいなのだ。現実には存在しない羽ばたきを感じながらじっと眺めていると、やがて身体が舞い上げられた落ち葉のように平衡感覚をなくすのが判った。おれはぼんやりと見慣れた空間を漂った。時々ピンボールがフラッパーに弾かれて唐突に向きを変えるみたいにひっくり返ったり横向きになったりした。それはよくある例えの、大海の中の小船のような状態だった。そんなことになってもおれは何もアクションを起こそうなんてことは考えなかった。現
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