巨大な羽ばたきのビート/ホロウ・シカエルボク
 
それに関しておれに理解出来ることはひとつもない。まるでない。そういうことだ。おれは時計に目をやる。そいつの存在を認識してからというもの、それまで何をしていたのかという記憶がすっかりなくなってしまった。現在の時刻を確認することは出来る。日付変更線まであと二時間はある。何の変哲もない、ごく普通の夜だ。だけど、その中で展開されてきたはずのおれの暮らしの痕跡はまるで見当たらない。おれは困惑しているが明らかに現象はまだ途中経過であり、判断をするのはすべてが終わってからでも遅くはないだろうと考えている。そう―たぶん、それで大丈夫だろう、いまここにあるものの力は確かに巨大なものだけれど、それがたとえばおれの命な
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