ナボコフ『青白い炎』第一篇・試訳/春日線香
 

それが今やどっしりと、荒々しく育った。そう、申し分なく成長したのだ。
白い蝶がラベンダーの茂みをひらひらと飛び
その木陰をくぐり抜けて、小さな娘のまぼろしのぶらんこを
穏やかに、やさしく揺らしている。

家自体はさほど変わっていない。翼棟をひとつ
改築しただけだ。その翼棟にはサンルームがあり
見晴らし窓のそばには、意匠を凝らした椅子が備え付けてある。
身動きの取れぬ風見鶏に代わり、今は
大きなペーパークリップ状のテレビアンテナが光っていて
無邪気な、薄絹のようなモノマネドリが
彼女の耳目に触れた物事のすべてを語りに、しばしば訪れた。
チッポー、チッポーという鳴き声から

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