ナボコフ『青白い炎』第一篇・試訳/春日線香
れた
連珠形の驚くべきもの
自転車のタイヤ跡を除いては。
微かな痛みの一筋が
戯れの死に引き寄せられ、ふたたび遠のきはするが
しかしいつでも存在していて、わたしを駆け抜ける。
ちょうど十一歳になったある日のこと
わたしは床にうつ伏せに寝そべって、ぜんまい仕掛けのおもちゃ――
ブリキの少年が押すブリキの手押し車――を見ていた。
それが椅子の脚を迂回してベッドの下に迷いこんだその時
突如として脳裏に陽の光が差した。
それからは闇夜。しかもこの上もない闇夜だ。
わたしは時空のいたるところに撒き散らされた気がした。
片足は山頂に
片手は波に濡れた浜の小石の下に
片耳
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