ナボコフ『青白い炎』第一篇・試訳/春日線香
につつまれた抽象的な落葉松
それらを背にしたどんよりと暗い白色を。
それから夜が見る者と風景を結びつけるにつれて
徐々に濃くなっていく二重の青色を。
朝になると、霜のダイヤモンドが
驚きの声を上げるのを聞く。足に拍車をつけた誰が
空白のページのような道に、跡をつけていったのか?
左から右へと冬の記号を読み解くのだ。
ぽつ、ぽつ、歩みを刻む矢印。もう一度。
ぽつ、ぽつ、歩みを刻む矢印……雉子の足跡!
首飾りをかけたおまえ、気高き雷鳥よ
おまえは我が家の裏手に朋輩を見つけた。
来し方を指し示す矢印のような足跡を持つ彼を
『シャーロック・ホームズ』で見かけなかったか?
あ
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