ロクデナシ/為平 澪
 
さんのお腹の中にいる時、旅行したことがある。そこのなだらかな平野で、母さんと約束したのは、二十年後三人でまたこの地にこようと言ったんだ。それなのに、俺は母さんに苦労ばかりさせてしまった。俺には母さんやお前のような才能はない。もっていたものといえば小さな会社だけだ。今はもうそれすらもない・・・。それでも、信じてはくれないだろうけど、父さんの守りたいものは今も昔も、お前と母さんだけなんだ・・・それなのに・・・お前は・・・。私はただ、お前と母さんの笑っている顔を見たかっただけなのに!!」
 父はまるでこの十六年間を後悔するかのようにうつむいたまま嗚咽を漏らした。
 ――この人は不器用なのだ。そし
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