ロクデナシ/為平 澪
腹にかけて腕をまわした。俺は、その腕をふり切ると台所にある包丁で親父めがけて飛び込んだ。
――親父はよけなかった・・・。
右腹を押さえて、
『つらかったな・・・。』
とだけ言って倒れたんだ。」
鶴町は夕日を見ながら淡々と語る。でも肩が震えていた。
「お前に俺の宝物を見せてやるよ。」
そういって僕に手渡されたのは黄色くなった皺皴の封筒だった。表には
�明へ�
と書いてある。
鶴町の父が鶴町に宛てた手紙だった。
�明。元気でやっているか。少年院の生活には慣れたか?父さんの方は今、新しい建築物の設計で
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