ロクデナシ/為平 澪
 
で台所へ向かう。収納ドアから包丁を取り出し手首にあてた。ヒヤッとした冷気が僕を興奮させた。思いきって強く押しあてて引いた時、鋭い痛みが体中にはしった。僕は僕の痛みに驚いた。
 ――まだ痛みを感じるのか!こんなに絶望しているのに。まだ未練があるのか!こんな頭をひきずって生きていかなければならない自分。人としての価値を失っているのに!この痛みが皮肉にも僕に生きていると告げてくる。役立たずのこの僕は真夜中の台所で大声で泣いた。
初めて産声をあげたように泣いた。
�ここにいる。助けて!愛して!�
というふうに。
 手首を刻んだ夜なによりも、僕の心が痛がってい
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