そしてすべてはあるべき色に/ホロウ・シカエルボク
脚を切り取られた雌猫がおかしな走り方で逃げる
彼女が見たものは彼女よりはるかに大きないきものの―それよりもさらに大きな
弱気
なぜあれほどにも大きないきものが
この私などの脚を切り取らなければならないのだ
よろめきながら
彼女は考える
だが待て
そいつはあんたの後ろでいま大きな石を振りかぶっている
どうしようもなく血の海
轍を歩いていてそこにたどり着いた
絶対的に赤い水面からは
ところどころにノートのようなものが見えた
拾い上げてみるとそれは日記のようだった
赤く塗り潰されていてどんな日の記述も読み取ることは出来なかったけれど
裏表紙に書かれた名前には見覚え
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