水辺の、ほのか/千月 話子
 
ほのか
水の上で





   2000年 夏の夜

爆竹は嫌い 騒音と白煙の水上
たゆたう大きな川
しかめ面して見つめる小さな、ほのか
夏祭りには笑って ねぇ、笑って

巨大な色火の粉降る川辺にまぎれて
オレンジ色に頬染める可愛い、ほのか
手に持った わたあめ
溶けて砂糖水になってしまっても
心 花火の輪と共に





   3015年 朝もやの中

愛しいあなたを想って
ピンク色に光り差す素敵な、ほのか
恋人は千メートルの上空
巨大ロボットの操縦室へ行ってしまった

清掃された小川の桜
掬っても掬っても 涙の花びら
千年の白
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