蓑虫/島中 充
たの世話をし、子供を育て、台所に閉じこもって、干からびて死んでいくのはいや。他所におんながいるんでしょ。アタシを抱かないのは、他所におんながいるからでしょ。」
妻はひと月続いている詰問をまた始めた。
「ほらごらん。」
私は昆虫図鑑の蓑から半身を出して、湿った土の上を這っている蓑虫を指さし「六十を過ぎ、私の性器はこの蓑虫のように萎えているよ。あなたを抱いても、あなたの性器のまわりを這う半身を出している蓑虫になるだけだよ。」
私は懸命に行為のできないことを説明するのだった。
「違うのよ、ただ優しく抱いて欲しいだけなの。」と妻は言った。
私は妻の肩を抱き、優しく抱き起し
「さあー行こう、蓑
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