巨大な比喩/左屋百色
 
るのです。
私は詩を読んだことがありません。
書いたことも一度もありません。
風が吹いて花が揺れて陽が暮れて雨が降って家に帰って部屋に入らない巨大な比喩を砕いたら、それはもう
書く前に詩であった。読む前に詩であった。詩の中に私はいない。私の中に詩があった。私の詩は存在しない。詩は今日も詩であった。私は存在しないあなたの詩に興味はない。詩の中のあなたを見つける。見つけるために読む。私は死んだら比喩になる。詩にはならない。あなたは生きて下さい。私には優しさが足りません。私には書けない詩があなたにはあるのです。あなたには書けない詩が私にはあるのです。お互い既にあるのです。地球は巨大な比喩なのです
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