食べる 二編/乾 加津也
ばにしたものの
人の価値観はそれほど多様なものなのだ
こうしてハンバーガーを食べる
自分
食べて満足した胃袋が
いま、おまえはもっと食べろと
胃壁をそろりと刺激してくる
パンが食べたい
パンが食べたい
ハンバーガーをもう一つ買い付け
黙ったまま、涙ながらに
(きみに悟られず)
食べてはみた
食べる、食べよう
袖捲りのビジネスマンに紛れて
人通りも激しい、野郎ラーメンの前を歩く
あなたの足取りは軽い
昼の新橋
視線をあちこち巡らせながら
レディースリクルートスーツに身を包んだあなたの
ひとりでも楽しくて仕方がないといった
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