山林の詩/山人
らされ始めた。突然、暗闇はすでに暗闇などではなくなり、現実のものとして現れはじめた。いささかも微動だにせず渾身の夏の陽光に照らされている。「すべて、その暗闇に差し出せば良いのだよ」、と声がする。手のひらの臓物を掲げて静かに目を閉じて、自らをささげて、暗黒の中に魑魅魍魎としたその内奥へ、入り込んでしまおう。魔界からの伝達が来ないうちに。それにしても今年は暑いな。
「山林に残された風」
山林は祭りの後のように、しなだれた風景をさらしている。
命をおどらせた、たくましい汗と鼓動が、かすかな風を生み、どこか静かにたたずんでいるようだ。
おもいの仔虫を黙らせて、思考を凝固させ、俺たちの汗
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