愚愛の詩/ただのみきや
 



愛は初めから引き裂かれていた傷口
失われた半身として対象に触れること
だけど同時に愛はその半身が
異なる他者であることを受け入れること
犠牲すら差し出すことはできても
強制することなどできはしないのに
わたしはボールを投げても上手く受け取れないおまえに
受け取り方を躾けようとしたのだ


おまえがギアの入れ方が解らず悩んでいた時
わたしは横から土足でめいっぱいアクセルを踏んだ
そして自分の癇癪を愛だと嘯いた
前へ進めないおまえの内側では
行き場のない発動が唸りを上げ黒煙を吹いていた
おまえが自分の言葉を見つけて口にする前に
わたしはより良い言葉をその口に押
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