オーティスをシンパシーで笑い飛ばしながら、それでも。/ホロウ・シカエルボク
と言えるような時だってあるさ
ベンチのそばの植え込みの中からクロアゲハが一羽飛んだ
やつは遅い春の
影になろうとしているのだ
叩き込んだカフェインの暴力的覚醒
錆びついた螺子を強引に回す
たとえそれが歪んでしまって二度と使えないようなことになっても
錆びついたままでいるよりはマシなことに違いない
いまそうして欲しいと思う瞬間に都合よく
夜は明けたりすることなどないのだ
体液が滲み出す裂傷だらけの手のひらの痛みが夜毎見せる夢は
目を焼くような光線のダンス
無意識下はいつか蒸発するだろう
だれもいない世界のもやになって
やがてとるにたらない思い出のように消え
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