春に吹く風/吉岡ペペロ
 

鳥になったことを思い出そうとした。

車のエアコンを最強にして顔にあててみた。

新緑のことを嫌いにならずにすんだのだと思った。

京香のなかで果てたことを思った。

なんであんな男気だしたんだろう。

月が高くなって見えなくなっていた。

運転しながら顔をフロントガラスに近づけて上げた。

月が当たり前のように夜空に穴をあけていた。

ぼくは届かないそこに顔を入れたくて首をのばした。

のばすとそこに現れたのは自宅のリビングだった。

紫の絨毯にレオが寝そべっている。

ぼくの帰りを待っている。

ちいさな音でテレビがついている。

カラに
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