春に吹く風/吉岡ペペロ
が嫌いになっていた。
徒党を組んで咲きほこる桜なんて嫌いになっていた。
大人は春に傷つくのだ。
でも新緑だけはそうしたくなかった。
だから無理矢理時間をつくった。
黒がまじって空の群青が色を濃くしていた。
「あそこにする」
スーパーに車を停めてふたりで店内に入った。
ぼくが食材を選んでかごの中に入れていった。
「季節のたけのこも、な」
「こんどたけのこご飯つくるな」
途中京香が豆腐を入れるのを見て胸に一瞬痛みが走った。
ぼくはなんだか仕返しにドッグフードをかごに入れた。
レジを済ませて袋に詰めこんでいるとき、また、青のゴ
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