春に吹く風/吉岡ペペロ
 
鬱がすこしおとなしくなった。

ぼくはふやけた飛行機雲を見やっていた。

雲には夕方の色がついていた。

京香が買い物をして帰る時間が迫っていた。

京香とはまえの職場で一緒だった。

ふとメールしたというのは嘘かも知れない。

しようしようと思ってしたのかも知れない。

ぼくは独立したばかりでまだ慌ただしかった。

久しぶりに会ったのはぼくの行きつけの韓国料理店だった。

キムチ鍋にはジャガイモとインスタントラーメンが入っていてぐつぐつと煮立ってくると京香の服が気になった。

飛び跳ねるといけないからぼくは持っていた青のゴミ袋を破ってそれを京香にうえから着
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