春に吹く風/吉岡ペペロ
 
ぼくを物悲しくさせていた。

「結論から言うと負けです」

辞めた社員が残業代を請求して裁判をおこしていた。

「就業規則自体にはなんの問題も指摘されなかったんですが、就業規則を見てない、というのが論点で・・・・負けました」

ぼくは控訴の手続きに入る意志を告げて電話を切った。

京香が鳥になって喜んでいる。

遊歩道を歩きながら、強い風が吹くたび鳥をした。

なんどしても京香は飽きなかった。

「あたしばっかりじゃなくて、あなたもやって」

京香がぼくのうしろにまわってぼくの脇に腕を差した。

風が顔を洗った。耳に風の音がねじ込んできた。

胸の憂鬱が
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