星屑たちへ/opus
ドカリは目を見張った
ヤドカリは立ち上がった
そそくさと一目散に歩き出した
息が切れ、
腹が減り、
足が縺れ、
それでもなお、
歩みを進めた
それでも
視界には砂浜ばかり
ヤドカリは
歩いた
歩きに歩いた
しかし、
その歩は止まった
足が動かなくなった
ヤドカリは
ハサミを伸ばした
まるで這うように
ずずっ
ずずっ
少しずつ前へ
前へと
その瞬間、
ズズズ
ゴゴゴ
砂を食み
伸縮を続ける波が
一際大きくせり上がり
ヤドカリを飲み込んだ
気付くと
深い海の中
ゆっくりと
ゆっくりと
沈んでいく
海の表明では
月がゆら
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