ザッツ;泣き女/アラガイs
 

炎は指先から女の唇を焦がす
うぅうぅ……嗚咽が辺りの木々を沈黙へ追いやれば
懐かしいささやきがくびすじをさわり
それはまだ土の匂いが立ち込める朝の石段に
苔蒸した地をひしぎ
塞がれた庵蒼の果て
いま炎は立ち上がり感情は移入された
若い僧侶は女に導かれるように
肩をふるわせては息をつまらせて泣いた

…けっして山門の方をふり返ってはいけないの

紅く泣き腫らした瞳を大きく見開くと
雫石の跡も乾かないうちに女は坂道をそぞろ歩きに下りていく
戸口を閉め出されては慰めてくれたひと
あとには藤色の絣と面影だけがゆらいでいた
これまで堪え忍んできた思い
、忍
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